教育改革の推進
健康管理
園医さんのワンポイントアドバイス
幼稚園の園医さんによるワンポイントアドバイスをご紹介します。幼稚園園医 宮原小児科医院 宮原道生先生です。
2017年6月『検尿の異常について』
小学校・中学校の運動会が晴天に恵まれ、予定通りに開催できて、お兄さん・お姉さんは喜ばれたと思います。年長さんも旗取りに参加されたのではないでしょうか。今回は、検尿についてお話し致します。
検尿の異常について
採取方法;成人は中間尿といって、最初の方を便器に排尿して、一旦停止して、途中からコップに取る方法が一般的です。幼児でも、年齢とともに出来る人の割合が増えてきますが、途中を取るのが難しい場合が多く、特に女の子は陰部の汚染が混入しやすくなります。起床して排尿する前に、陰部を拭いて頂くと尿白血球などの偽陽性が減らせます。乳児さんで、他の施設で脱脂綿に染み込ませて検査しているのを聞いたりしますが、腎臓の状態を知るためには、あまり有用とは言い難いので、かかりつけ医から採尿方法を教えてもらう様にお願い致します。通常は、尿パックを使っての採尿となりますが、厳密さが要求される場合には尿道から膀胱に柔らかい合成樹脂の管(尿道カテーテル)を入れて採尿する事もあります。
次に各異常について見て行きましょう。
尿中白血球;上記の通り、病気じゃないのに引っかかる事が一番多い異常です。尿道炎の場合は排尿時痛、膀胱炎の場合には頻尿(何回もおしっこに行く、残尿感があるなど)、腎盂腎炎の場合は高熱、腰痛など何かしら症状を伴う事が多いですが、白血球の混入の程度が強い場合や長期に及ぶ場合は詳しい検査が必要になります。
尿潜血;目で見て尿が赤い~赤黒い場合(肉眼的血尿といいます)は、直ちに病院に行きましょう。様々な原因で尿が赤い可能性があり、詳しい検査が必要です。尿潜血陽性の大半は目で見て赤くなく、他の身体症状や蛋白尿を伴わない良性の血尿(無症候性血尿)です。親族に血尿があるけれど、腎機能に異常ない場合は良性家族性血尿が最も考えられます。
非常にまれですが、親族に腎機能に異常ある場合は、詳しい検査が必要な場合もありますので、かかりつけ医にご相談下さい。尿潜血だけでなく、尿に蛋白が混じって、膀胱炎ではなさそうだ、という場合も精密検査が必要になります。
尿蛋白;陰部の汚染で蛋白陽性になることも少なくありませんが、清潔に採取しても尿たんぱく陽性になる場合は、体がむくんでいないか(特に「まぶた」と「すね」)、体重が短期間で増えていないか、尿の出方が悪くなっていないかなどのチェックが必要です。尿たんぱくが明らかな場合は、ネフローゼ症候群や慢性糸球体腎炎の急性増悪などの可能性あり、総合病院での検査・治療が必要になることがあります。
尿糖;尿糖陽性の際は、血糖が高くて尿に溢れている場合と、血糖は正常なのに腎臓での再吸収が不十分で尿糖陽性になっている場合があります。いずれにせよ、尿糖陽性に初めて気づかれた場合は放置せずに、かかりつけ医に受診して、二次医療機関での検査・治療が必要かどうか判断してもらって下さい。尿糖陽性で、水分を取っても喉の渇きが収まらず何回も多量の尿が出て(多飲・多尿の状態)脱水になり、体がだるく体重減少を伴う場合は、膵臓からのインスリン分泌が減少している可能性があり、緊急を要します。
低年齢の時は、採尿がうまく行かなくても、それほど神経質になる必要はありませんが、
小学校、中学校では学校検尿があります。それに向けての練習と思って、取り組んで下さい。よろしくお願い申し上げます。
なお、年齢が上がるにつれ、想定する病気の対象も異なりますので、保護者の方が検診時に尿に異常があった場合には、上記はあまり参考にされずに、かかりつけ医にご相談下さい。
<園医>宮原小児科医院 宮原道生先生