教育改革の推進

健康管理

園医さんのワンポイントアドバイス

幼稚園の園医さんによるワンポイントアドバイスをご紹介します。幼稚園園医 宮原小児科医院 宮原道生先生です。
2015年7月園医さんのつぶやき「アナフィラキシーとは?」
梅雨明けが待ち遠しい頃ですが、皆様お元気でしょうか?10年くらい前の6月に梅の実を嬉しそうに抱えて「これから梅酒作る」と言っていた知人を思い出します。
今月はアレルギー、アレルギー検査にまつわるお話をさせて頂きます。
20年くらい前までは、アトピー性皮膚炎はアレルギー、特に食物アレルギーがあるから発症する、と考えられていました。そして検査で何か陽性になると、その食べ物を止めておきましょう、という指導をしていました。
ところが現在は、アトピー性皮膚炎の最初は「皮膚が弱くて炎症がおこりやすい状態」である、とされています。皮膚が傷んだ状態は、バリア機能が低下していますので、普通の状態より、異物が皮膚を通過しやすくなります。その異物にアレルギー反応を起こす様になることで初めてアレルギーが成立する、と考えられる様になりました。加水分解小麦を含んだ泡立ちの良い石鹸を毎日使うことで、小麦アレルギーを発症した方がおられました。皮膚を通してアレルゲンが感作される証明になりました。
食物アレルギーの診断には、「食物と症状の因果関係が、①明らかに結びつく、または、②再現性がある、または、③負荷試験で証明される、ことが必須条件で、血液検査または皮膚の検査は補助的な位置づけになっています。
アナフィラキシーとは、皮膚、粘膜、消化器、呼吸器など、複数の臓器の症状がみられ、時間とともに症状が強くなるもので、アナフィラキシーショックとは、血圧が下がったり、呼吸障害が強くなるため、意識がぼんやりして、呼びかけに対しての反応が悪くなる状態です(ショック状態になったら救急車を呼んで下さい)。
アナフィラキシーを起こす、または単一の臓器の症状がとても強い場合(全身のじんましんの出現、摂取後の激しい嘔吐など)は当該食品の摂取は見合わせる事になりますが、摂取後に軽い発疹が口の周りにちょっとだけ出る、などは禁止する対象にはなりにくいです。
 時々、症状が全くない方の親御さんが「血液検査してください」と受診されることがありますが、毎回以上の様なお話をして、食物と症状の結びつきが明確でない方の検査は、軽度陽性に出ても食事制限の対象にならない事を前もって説明しております。
 20年くらい前は、アレルギー検査で陽性の場合、食事制限の対象にしている施設の方が多数派でしたが、現在は過剰な制限は弊害の方が多い事が知られており、食事制限の実施を慎重に行っている病院が多くなっています。
 ただ、もし身近にアナフィラキシーを起こす方がおられる場合は、周りのお友達も気をつけて上げて下さい。ほんの少量でも反応を起こす方がおられます。
 また、3月後半になって、次年度の食物アレルギーの解除や継続の評価を駈け込んで来られる方がおられます。正しい準備や評価には時間がかかりますので、下半期、せめて1~2月までにかかりつけ医と相談をして、検査や診療方針を決定して頂いて下さい。宜しくお願い致します。
<園医>宮原小児科医院 宮原道生先生
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